
スマートフォンの画面を指でなぞると、そこに広がるのは81マスの宇宙。将棋ウォーズという戦場で、私たちは日々、見えない敵と、そして自分自身と戦っています。
対局が終わった瞬間、勝敗の行方と同じくらい、あるいはそれ以上に私たちの視線を釘付けにするものがあります。それは、画面中央に浮かび上がる六角形のグラフ――「棋力レーダーチャート」です。
「なぜ、私は勝っているのに戦術力が低いままなのか」
「この歪なグラフは、私の将棋の偏りを嘲笑っているのではないか」
そんな疑念を抱いたことはありませんか?
特に「戦術力」という項目は、多くの将棋指しにとっての謎であり、同時にコンプレックスの源泉でもあります。単なる強さの指標ではない、何か別の「美学」や「知識の深淵」を問われているような気がしてならないのです。
本記事では、将棋ウォーズにおける「戦術力」の正体を、公式情報、データの傾向、そして私自身の長きにわたる苦闘の体験を交えて、徹底的に解剖していきます。これは単なる攻略記事ではありません。数字の向こう側にある、あなたの将棋観を見つめ直すためのエッセイです。
【本記事の信頼性】
本記事は、将棋ウォーズ公式サイトのヘルプ情報、運営元であるHEROZ株式会社の公表資料、および公益社団法人日本将棋連盟の基礎知識に基づき、筆者の実体験と検証を加えて執筆しています。
参考文献:
・将棋ウォーズ公式(HEROZ)
・公益社団法人 日本将棋連盟
・HEROZ株式会社(AI技術情報)
将棋ウォーズの戦術力とは?

画面の中に息づくあの六角形。それは、あなたの将棋の「履歴書」であり、対戦相手に対する無言の「自己紹介」でもあります。
棋力レーダーチャートとは?
将棋ウォーズにおける棋力レーダーチャートは、単に段位(強さ)を示すだけのものではありません。それは、プレイヤーの棋風、癖、そして「将棋というゲームをどのように楽しんでいるか」を可視化した、いわば「将棋の指紋」のようなものです。
このチャートは以下の6つの要素で構成されています。
- 戦術力: 戦法や囲いの知識量、バリエーションの豊かさ。
- 攻撃力: 攻めの鋭さ、攻め手を継続する力。
- 守備力: 自玉の堅さ、受けの正確さ。
- 終盤力: 詰みの見切り、速度計算の正確さ。
- 芸術力: 意外性、創造的な一手、華麗な手筋。
- 早指し力:指し手の速さ。
これらがバランスよく整った綺麗な正六角形を描く人もいれば、どこか一点だけが鋭く突き出した「槍」のようなグラフを持つ人もいます。
私は以前、チャートの形など気にも留めていませんでした。勝てばいい、段位が上がればいい。そう信じて疑わなかったのです。しかし、ある時、将棋盤に向かって感想戦をしている際に気付きました。私の将棋は「ワンパターン」なのではないかと。
現実の将棋盤や将棋駒を使って指す時と違い、アプリ上の対局では、このチャートが如実に「あなたの将棋は偏っている」と告げてくるのです。その最たる指標が「戦術力」です。
戦術力とは?

では、核心に迫りましょう。「戦術力」とは一体何なのか。
多くの初心者が誤解している点ですが、これは「戦術が上手いかどうか(=作戦勝ちできるかどうか)」という純粋なスキルだけを指すのではありません。将棋ウォーズのシステムにおいて、戦術力とは「コレクションの豊かさ」と「知識の幅」を意味しています。
具体的には、対局中に発動させた「囲い」や「戦法」のエフェクトの数と種類が、この数値に大きく影響を与えます。
公式サイト等の情報や長年のユーザー検証から導き出される定義は以下の通りです。
戦術力 ≒ (使用した戦法・囲いの種類の多さ)×(それらの難易度やレア度)
つまり、どれほど将棋が強くても、来る日も来る日も「棒銀」しか指さないプレイヤーの戦術力は、決して高くなりません。逆に、将棋の腕前は未熟でも、ある時は中飛車、ある時は三間飛車、そしてまたある時は矢倉囲いに右玉……と、変幻自在に戦型を変えるプレイヤーは、驚くほど高い戦術力を叩き出します。
これは、将棋を「勝負」として捉えるか、「知識の探究」として捉えるかの違いとも言えるでしょう。
高い・低いの目安
自分の戦術力が高いのか低いのか、その基準を知ることは、霧の中を航海する船乗りにとっての羅針盤のようなものです。段位ごとの平均的な目安を、私の観測範囲と一般的なデータに基づいて整理してみました。
| 段位・級位 | 戦術力の目安 | プレイヤーの特徴 |
|---|---|---|
| 3級以下 | 1.0 ~ 1.8 | 特定の戦法を覚えたての状態。エフェクトが出る条件を満たせずに指していることが多い。 |
| 1級 ~ 初段 | 2.0 ~ 2.8 | 得意戦法が確立される時期。逆に言えば「それしか指さない」ため、数値が停滞しやすい壁の時期。 |
| 二段 ~ 三段 | 3.0 ~ 4.0 | 相手の戦型に合わせて指し手を変える余裕が出てくる。居飛車・振り飛車の両方を嗜む人も増える。 |
| 四段以上 | 4.0 ~ 5.0 | オールラウンダー。あるいは「エフェクト収集」をコンプリートした猛者たち。 |
ここで興味深いパラドックスが生じます。「初段で戦術力4.5」というプレイヤーと、「四段で戦術力2.2」というプレイヤーが存在するのです。
前者は、おそらくBOOK☆WALKERなどの電子書籍で多様な定跡書を読み漁り、知識をコレクションすることに喜びを見出すタイプでしょう。後者は、研ぎ澄まされた一本の刀のように、特定の戦型(例えば「ノーマル四間飛車」一筋)を極めた職人肌です。
どちらが優れているとは一概に言えません。しかし、戦術力が低いままであることは、将棋ウォーズという「ゲーム」においては、楽しみの半分を捨てているようにも私には思えるのです。
上げ方

戦術力を上げるための方法は、ある意味で「自分らしさを捨てる」ことと同義かもしれません。慣れ親しんだ心地よい戦法を脱ぎ捨て、未知の荒野へと足を踏み入れる勇気が必要です。
1. 意識的に「違う戦法」を指す
最も確実な方法は、居飛車党なら振り飛車を、振り飛車党なら居飛車を指すことです。これは単に数値を上げるだけでなく、将棋の視野を広げる上でも極めて有効です。
例えば、ABEMA将棋チャンネルでプロ棋士の対局を見て、「今の将棋界では角換わりが流行っているのか」と感じたら、見よう見まねでも良いので自分も角換わりを指してみる。その好奇心こそが、戦術力の数値を押し上げます。
2. 「囲い」を完成させてから戦う
将棋ウォーズのエフェクト判定はシビアです。あと一手で囲いが完成するのに、我慢できずに戦いを起こしてしまうと、システムはそれを「囲い」として認識しません。
美濃囲い、穴熊、矢倉……。教科書通りの形をしっかりと作り上げる「構築力」が求められます。棋書を読み込み、正確な手順をインプットすることが近道です。
3. エフェクト収集を楽しむ
知識の源泉を持つことは武器になります。Kindle端末を片手に、未知の戦法の定跡書を開きながら、実際に指してみる。このインプットとアウトプットのサイクルを回すこと以上に効率的な方法はありません。
特に、定跡書は一冊買うと高価ですが、読み放題サービスなどを利用すれば、マイナー戦法の本も気軽に読めます。この点において、Kindle Unlimitedなどのサービスは、戦術力向上を目指すプレイヤーにとっての「知の宝庫」と言えるでしょう。

私の見解・考察
私が思うに、将棋ウォーズにおける「戦術力」とは、プレイヤーの「好奇心の総量」ではないでしょうか。
単に勝つだけなら、一つの戦法を極めるのも素晴らしい道です。しかし、将棋という深遠なゲームの全容を味わい尽くしたいと願うなら、戦術力というパラメーターは、私たちを未知の領域へと誘うガイド役を果たしてくれます。
数値が高いから偉い、低いから駄目だという話ではありません。しかし、もしあなたが「もっと将棋を楽しみたい」「マンネリを打破したい」と感じているのなら、戦術力の数値を上げる旅に出てみることを強くお勧めします。
それは、駒台の上にある持ち駒をただ眺めるだけでなく、盤上のあらゆる可能性に光を当てる行為なのですから。
将棋ウォーズの戦術力とは?棋力レーダーチャートを深掘り

ここからは、戦術力以外の要素も含め、レーダーチャートが示す意味をさらに深掘りしていきましょう。それぞれの数値が持つ意味を理解することで、あなたの将棋観はより立体的になるはずです。
チャートの平均
完璧なバランスを持つプレイヤーは稀です。多くのプレイヤーは、どこかが突出し、どこかが凹んでいます。
一般的に、級位者の平均的なチャートは「小ぶりな正六角形」か、あるいは「攻撃力だけが高い三角形」になりがちです。攻めることは楽しいですが、守ることや、詰みの計算は苦痛を伴うからです。
もし自分のチャートを客観的に分析したい、あるいはプロの視点からアドバイスが欲しいと感じるなら、ココナラなどで棋譜添削を依頼してみるのも一つの手です。自分では気づかない「チャートの歪みの原因」を、上級者が言語化してくれるでしょう。
終盤力の目安
戦術力が「知識」なら、終盤力は「命」です。将棋ウォーズにおいて、最も段位と相関関係が強いのがこの「終盤力」だと言われています。
終盤力の数値は、主に以下の要素で判定されていると考えられます。
- 詰みがある局面で、正確に詰ませたか。
- 自玉に詰みがある局面で、投了や受けを選べたか。
- 平均着手速度(迷わず指せているか)。
目安として、「終盤力3.0」を超えられるかどうかが、級位者と有段者を分かつ分水嶺となります。
終盤力3.0
終盤力3.0という数字。これは、単に「詰将棋が解ける」というレベルを超え、「実戦の速度計算ができる」領域に入ったことを示唆します。
このレベルに達すると、相手玉を見た瞬間に「あ、これは詰むな」という直感が働くようになります。対局時計の秒読み音に追われながらも、指先が勝手に正解を弾き出す感覚。いわゆる「指し手が光って見える」現象を体験し始めるのが、この3.0というラインなのです。
終盤力の上げ方
戦術力は「広く浅く」で上がりますが、終盤力は「深く速く」でしか上がりません。
王道にして唯一の近道は、やはり詰将棋です。
しかし、難解な7手詰め、9手詰めを何時間もかけて解く必要はありません。実戦で現れるのは、もっと泥臭く、パターン化された詰み筋です。そこで役立つのが、数をこなすための電子書籍です。
Kindleには、1手詰めや3手詰めのハンドブックが無数に存在します。これらを「考える」のではなく「見た瞬間に答えが浮かぶ」まで繰り返すこと。Kindle Unlimitedなら、数多の詰将棋本を乱読できるため、パターン認識力を鍛えるにはうってつけの環境と言えます。
また、囲碁将棋チャンネルなどで、プロ棋士が秒読みの中で繰り出すギリギリの攻防を見ることも、脳内の「終盤回路」を刺激します。
守備力の目安
守備力は、単に「穴熊に組めば上がる」という単純なものではありません。相手の攻めをいなし、受け流し、時にはあえて自玉を危険地帯に晒して逃げ切る技術も含まれます。
私の経験上、守備力が高いプレイヤーは「負けにくい将棋」を指します。攻め将棋は派手で戦術力も上がりやすいですが、守備力の高い将棋は、土俵際での粘り強さという、数値以上の威圧感を相手に与えます。
駒袋から取り出した駒を丁寧に配置し、鉄壁の城を築くような慎重さが、この数値を育てるのです。
芸術力3
そして、最も捉えどころのない項目、それが「芸術力」です。
芸術力3前後のプレイヤーは、時折「ハッとする一手」を放ちます。定跡にはないけれど、局面的には成立している力強い一撃。あるいは、誰も予想しなかった場所への駒打ち。
この感性は、論理的な学習だけではなかなか養われません。将棋を題材にした作品、例えば漫画やアニメで描かれるドラマチックな対局シーンからインスピレーションを受けることも、意外と馬鹿にできない効果があります。物語の中でキャラクターが放つ「魂の一手」に触れることで、自分の将棋に対する美意識が磨かれるからです。
芸術力4
芸術力が4を超える領域。これはもはや「魅せる将棋」の域です。
ただ勝つだけでは満足できない。美しく勝ちたい。そんな業の深いプレイヤーたちがここにいます。
彼らの指し回しは、まるで扇子を優雅に仰ぎながら舞うかのよう。定跡を完全に理解した上で、あえてそれを外す「外し」の美学を持っています。このレベルに到達するには、膨大な対局数と、将棋への深い愛、そして遊び心が必要です。
よくある質問Q&A
Q. 戦術力4以上にするには何種類の戦法が必要ですか?
A. 明確な数は公表されていませんが、目安として30〜50種類以上のエフェクト(囲い・戦法含む)をコレクションし、それらを一定の頻度で使用する必要があると言われています。「広く浅く」が基本戦略です。
Q. 課金アイテム(棋神)を使うと戦術力は上がりますか?
A. 直接的には上がりませんが、間接的には上がります。棋神(AI)は最適な手順で指すため、結果として高難易度の定跡や囲いを完成させてくれる確率が高いからです。難しい定跡のエフェクトを回収するために棋神を使うのは、一つの有効な手段です。
Q. 戦術力が下がってしまいました。なぜですか?
A. 戦術力は「直近の対局内容」も反映されます。同じ戦法ばかりを連投していたり、囲いを省略して急戦ばかり仕掛けていると、システムが「戦術の幅が狭まった」と判断し、数値が下がることがあります。
Q. エフェクトが出たのに戦術力が上がりません。
A. エフェクトが出ることと、戦術力が上がることはイコールではありません。そのエフェクトが「既に何度も使っているもの」であれば、評価の上積みは微々たるものです。「まだ使ったことのない」「使用頻度の低い」戦法を使うことが重要です。
まとめ:将棋ウォーズの戦術力の正体!爆上げの裏技と上がらない原因を暴露

将棋ウォーズの戦術力。それは、デジタルな数値でありながら、極めて人間臭い指標です。
それはあなたの「知識のアルバム」であり、「冒険の記録」です。レーダーチャートの歪みを嘆く必要はありません。その歪みこそが、あなたのこれまでの歩みそのものだからです。
しかし、もしあなたが「新しい景色を見たい」と願うなら、恐れずに新しい戦法を試してみてください。最初は負けるかもしれません。ぎこちない手つきになるかもしれません。けれど、その一局一局が、確実にあなたのチャートを、そして将棋観を広げてくれます。
画面の中の六角形が大きく広がった時、あなたはきっと気付くはずです。
将棋という宇宙が、これまでよりも少しだけ広く、そして美しく見えていることに。

