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大学将棋のレベルが高すぎる。元奨励会が支配する魔境の真実

大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

大学将棋。

それは、ただの部活動という枠組みには収まりきらない、一種異様な熱気が支配する空間だ。

パチリ、パチリという駒音が、数百、数千と重なり合い、講堂の空気を振動させる。

そこには、青春の輝きとともに、勝負師たちの業(ごう)が渦巻いている。

高校までで将棋を辞める者もいれば、大学から始める者もいる。

しかし、この世界の頂点に君臨するのは、かつてプロ棋士を目指し、奨励会という修羅場をくぐり抜けてきた猛者たちだ。

彼らの指し手は、アマチュアの域を遥かに凌駕している。

盤上に描かれるのは、趣味の遊戯ではない。魂とプライドを削り合う、静謐な戦争である。

あなたがもし、大学将棋の門を叩こうとしているなら、あるいはそのレベルの高さに興味を抱いているなら、知っておくべき現実がある。

そこは、純粋な情熱と、冷徹な実力が交錯する、美しくも残酷な世界なのだ。

本記事では、大学将棋という特異なフィールドの「レベル」について、データと肌感覚の両面から徹底的に解剖していく。

その高さに絶望する必要はない。むしろ、その頂きを目指す過程にこそ、一生の財産となるドラマが待っているのだから。

【本記事の信頼性】
本記事は、全日本学生将棋連盟の公式データおよび、大学将棋界の長年の動向、実際の大会実績に基づき執筆されています。

この記事を書いた人
将棋沼の住人N

東京都出身・在住の20代将棋系Webライター
将棋歴:15年
棋力:将棋ウォーズ四段 / 将棋クエスト五段 / 詰めチャレ六段
得意戦法:中住まい
推し棋士:屋敷伸之九段

将棋ウォーズの戦績

将棋ウォーズの戦績

詰めチャレ六段の認定証

詰めチャレ六段の認定証

大学将棋のレベル

大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

「大学将棋のレベルは高い」と一言で片付けるのは容易いが、その実態はあまりにもグラデーションが激しい。

それはまるで、エベレストの頂上と、近所の裏山が同じ「山」という言葉で括られているようなものだ。

大学将棋界は、初心者からプロ公式戦で勝利を挙げるレベルの超強豪までが混在する、カオスでありながらも厳格な階層社会である。

まずはその全体像を俯瞰してみよう。

大学将棋界のレベルを理解するには、「個人戦」と「団体戦」の二つの軸、そして「将棋倶楽部24」や「ウォーズ」といったオンライン対局サイトの段位を物差しにすると分かりやすい。

だが、数字だけでは測れない「現場の重圧」という魔物が住んでいることも忘れてはならない。

レベル・棋力

大学将棋のプレイヤー層は、大きく以下の4つに分類できるだろう。

それぞれの層が、異なるモチベーションと熱量を持って盤に向かっている。

  1. プロ予備軍・元奨励会層(S級) 彼らは「学生」という身分でありながら、実力はプロ棋士と遜色ない。奨励会三段リーグで次点を争った経験者や、学生タイトルの常連たちだ。彼らの読みの深さは、海底の暗闇を見通すソナーのようであり、一手の緩みも見逃さない。
  2. 全国大会上位・県代表クラス(A級) 高校時代に全国大会で活躍した猛者たち。あるいは、大学に入ってから爆発的に伸びた努力の天才たち。アマチュア五段〜六段の実力を有し、地域の将棋道場では敵なしの存在だ。
  3. 将棋部レギュラー・愛好家層(B級〜C級) アマチュア二段〜四段程度。大学から本格的に始めた者や、子供の頃に指していた将棋を再開した層もここに含まれる。彼らは純粋に将棋を楽しみ、部室での感想戦に花を咲かせる。しかし、彼らとて「ガチ勢」の本気には圧倒されることが多い。
  4. 初心者・エンジョイ層 「将棋、ちょっと興味あるかも」という層。最近では将棋を題材にした作品や、YouTube配信を見て入部する学生も増えている。彼らの存在が、殺伐としがちな勝負の世界に彩りを与えている。

ここで、具体的な棋力の目安を表にまとめてみた。

あくまで目安だが、大学将棋の「基準」がいかに高いかが分かるはずだ。

大学将棋レベル将棋倶楽部24 (R)将棋ウォーズ (段位)アマチュア段位備考
超・強豪(学生名人級)2800〜3000+六段〜七段以上六段〜八段プロ公式戦で勝利可能。元奨励会三段など。
強豪校レギュラー2400〜2700五段〜六段五段〜六段県代表レベル。全国大会での勝ち越しが目標。
中堅校レギュラー1800〜2300四段〜五段四段〜五段道場なら席主クラス。一般的には「めちゃくちゃ強い」。
一般部員1000〜1700二段〜三段二段〜三段将棋を楽しむ層。大会では初戦突破が目標。

A級

大学将棋における「A級」という言葉は、特別な響きを持つ。

それは、関東大学将棋連盟などの地域連盟における「1部リーグ(A級リーグ)」を指すことが多い。

ここに所属する大学は、まさに虎の穴だ。

A級リーグの対局室に足を踏み入れると、肌を刺すような緊張感に襲われる。

ここでは、アマチュア四段や五段といった、世間一般では「高段者」と呼ばれる人々が、まるで赤子のように捻り潰される光景が日常茶飯事だ。

A級大学のレギュラーメンバーになることは、全国大会に出場することと同義、あるいはそれ以上に難しい場合がある。

彼らは日夜、最新の定跡を研究し、AI(人工知能)を用いて自らの棋譜を解析する。

棋書を読み漁るだけでは足りない。

彼らはABEMA将棋チャンネルでプロの将棋をリアルタイムで追いかけ、その感覚を自らの血肉に変えているのだ。

A級の戦いは、もはや「学生の遊び」ではない。

大学の威信をかけた、知性の格闘技である。

もしあなたがA級大学のレギュラーを目指すなら、生半可な覚悟では通用しない。

「強くなりたい」という願望ではなく、「強くなければ居場所がない」という危機感が、彼らを突き動かしている。

B級

A級が「神々の戦い」であるならば、B級は「人間たちの熱き戦場」と言えるかもしれない。

だが、誤解しないでほしい。

B級だからといってレベルが低いわけではない。

むしろ、層の厚さで言えばB級こそが大学将棋のボリュームゾーンであり、最も熱いドラマが生まれる場所でもある。

B級リーグの上位校は、虎視眈々とA級昇格を狙っている。

入れ替え戦にかける彼らの執念は凄まじい。昇級がかかった一局では、手が震え、駒がまともに持てなくなるほどのプレッシャーがかかる。

盤上に涙を落とす敗者の姿も珍しくない。

また、B級以下の大学であっても、個人で見ればA級大学のレギュラーに匹敵する「エース」が存在することがある。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」を地で行く彼らは、団体戦においてチームの精神的支柱となり、格上相手にジャイアントキリング(大金星)を狙う。

この「一発」があるからこそ、大学将棋は面白い。

私の愛用しているKindle Paperwhite
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B級以下の選手たちが強くなるために活用しているのが、ブックライブなどで手軽に読める電子書籍の定跡書や、実戦形式のトレーニングだ。

彼らは限られた時間の中で効率的に強さを求め、上位層の壁を崩そうと爪を研いでいる。

団体戦

大学将棋の華、それが「団体戦」だ。個人戦が孤独なランナーの戦いだとすれば、団体戦は駅伝である。

襷(たすき)の代わりに、勝利というバトンを繋ぐ。

通常、大学将棋の団体戦は7人制(または5人制)で行われる。

これが何を意味するか。

たった一人の超天才がいても、チームは勝てないということだ。

チーム全体の「底上げ」と「総合力」が問われる。

団体戦の朝、会場に向かう彼らの顔つきは、個人戦の時とは明らかに違う。背負っているものが違うのだ。

先輩たちの想い、後輩たちの期待、そしてOBたちの視線。

それら全てが、盤上の駒一つ一つに重みを加える。

オーダー(出場順)の駆け引きもまた、勝負の一部だ。

相手のエースに誰をぶつけるか。確実にポイントを取れる場所はどこか。

主将やマネージャーは、相手校の戦力を分析し、裏の裏をかいたオーダーを組む。これはまさに軍師の采配である。

そして、勝負が決した瞬間。歓喜の雄叫びと、絶望の沈黙が交錯する。

仲間と抱き合い、涙を流す彼らの姿は、DMM TVなどで配信される青春ドラマよりも遥かにドラマチックで、生々しい感動を呼ぶ。

団体戦には、個人の棋力だけでは語れない「流れ」がある。

チームメイトが劣勢を跳ね返して逆転勝ちした瞬間、会場の空気が変わり、他のメンバーの指し手に勇気が宿る。

将棋はメンタルのゲームだと言われるが、団体戦ではそのメンタルが共鳴し、奇跡のような逆転劇を生むことがあるのだ。


大学将棋のレベルを深掘り

大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

ここまでは概略を述べてきたが、ここからはさらに踏み込んで、大学将棋の核心部分にメスを入れていこう。

具体的なランキング、絶対王者の存在、そして高校将棋との決定的な違いについて、容赦なく記述していく。

ランキング

大学将棋の実力を測るランキングは、毎年の大会結果によって変動する生き物のようなものだ。

しかし、長い歴史の中で形成された「勢力図」は確実に存在する。

一般的に、大学将棋のランキングを決める指標となるのは、以下の二大大会の結果である。

  • 全日本学生将棋王座戦(団体戦の最高峰)
  • 学生名人戦・学生王将戦(個人戦の最高峰)

これらを基にした、近年の勢力図(ティア表)を作成すると以下のようになるだろう。

Tier(階層)特徴代表的な大学
Tier 1:絶対王者・優勝候補全国優勝が至上命令。元奨励会三段クラスが複数在籍。層の厚さが異常。立命館大学、早稲田大学、東京大学
Tier 2:全国ベスト4常連Tier 1を食う実力を持つ。全国大会で上位入賞が当たり前。京都大学、大阪大学、慶應義塾大学、東北大学
Tier 3:地区強豪・全国常連各地方ブロック(関東・関西以外)の覇者や、関東・関西のA級中位。北海道大学、九州大学、名古屋大学、岡山大学など

特にTier 1の大学に関しては、プロ棋士養成機関である「奨励会」を退会した者が再起をかけて入学してくるケースが多い。

彼らは一度はプロの夢破れた者たちだが、その実力はアマチュア界では反則級だ。

「腐っても鯛」という言葉があるが、彼らは腐るどころか、大学という自由な環境で水を得た魚のように、のびのびと、そして凶暴に強さを発揮する。

もしあなたが、大学将棋のランキング上位校の対局を見る機会があれば、彼らの手つきに注目してほしい。

迷いなく、バシッと駒を打ち付けるその所作には、長年の修練に裏打ちされた美学が宿っている。

それは、高級な将棋盤に吸い込まれるような、心地よい音を奏でる。

大学将棋ランキング!東大も圧倒?元奨励会員が集う魔境の正体

立命館大学

大学将棋を語る上で、決して避けては通れない巨大な山脈、それが立命館大学だ。

彼らは単なる「強豪校」ではない。大学将棋界における「絶対王者」であり、他大学にとっては常に仰ぎ見る、恐怖と畏敬の対象である。

なぜ、立命館はこれほどまでに強いのか。その理由は、システムと環境、そして伝統の重みにある。

まず、立命館大学には「将棋推薦」とも呼べる独自の入試制度や、将棋に打ち込む学生を支援する土壌がある。

これにより、全国の高校トップクラスの実力者や、元奨励会三段といった「プロ一歩手前」の猛者たちが、磁石に吸い寄せられるように京都の衣笠キャンパスへと集結する。

彼らの部室(道場)は、大学のサークル棟の一室というよりは、一種の「修行場」に近い。24時間365日、誰かが盤に向かい、駒音を響かせている。

ここでは、将棋の研究が生活の中心だ。

先輩から後輩へと受け継がれる「立命館の研究」は、プロ棋士の最新形すら凌駕することがあると言われる。

立命館のレギュラー争いは、全国大会の本戦よりも熾烈だ。

部員数は多く、その中には学生名人や学生王将のタイトルホルダーがゴロゴロいる。

Aチーム(一軍)の座を勝ち取ることは、ある意味でプロになることと同等の狭き門をくぐるようなものだ。

この過酷な内部競争こそが、王者の強さの源泉である。

彼らが使う将棋駒は、使い込まれて飴色に輝いている。

それは、数えきれないほどの検討と、勝利への渇望が染み込んだ色なのだ。

強豪

立命館大学が西の横綱ならば、東の横綱として君臨するのが早稲田大学だ。

そして、そこに割って入る東京大学、京都大学といった旧帝大勢。

これら強豪校の戦いは、まさに「知の総力戦」である。

【早稲田大学】
伝統と革新が融合する場所。
早稲田の強さは「個の力」と「自由な気風」にある。
型にはまらない天才肌のプレイヤーが多く、立命館の組織力に対し、圧倒的な個の暴力で対抗する。
早慶戦(慶應義塾大学との対抗戦)は伝統の一戦として知られるが、全国大会での早稲田の眼差しは常に優勝カップに向けられている。

【東京大学】
日本最高峰の頭脳集団は、将棋においてもその演算能力を遺憾なく発揮する。
彼らの将棋は論理的で、緻密だ。AI研究をいち早く取り入れ、既存の定跡を疑い、新たな真理を盤上に構築する。
彼らにとって将棋は、解くべき複雑な数式のようなものかもしれない。
しかし、勝負どころで見せる泥臭い粘りは、彼らもまた熱き血潮を持つ勝負師であることを証明している。

これらの強豪校に共通しているのは、環境への投資と情報戦への意識の高さだ。

最新の対局時計を用いて秒読みの感覚を磨き、膨大な棋譜データを共有する。

彼らは知っているのだ。

現代将棋において、情報は武器であり、準備不足は死を意味することを。

団体戦レギュラーに必要な棋力レベル

では、具体的にどの程度の強さがあれば、これらの強豪校で、あるいは中堅校で、団体戦のレギュラーになれるのだろうか。

「強い」という言葉を因数分解してみよう。

ここでは、将棋倶楽部24のレーティング(R)を基準に、その過酷な現実を可視化する。

  • S級大学(全国優勝争い)のレギュラー:R2600〜2800以上
    この領域は「人外」の魔境だ。ネット将棋で高段者としてブイブイ言わせているレベルでも、ここでは「普通」か「弱い」部類に入る。元奨励会員や全国大会優勝経験者がひしめく中で、レギュラーの座を掴むには、プロ公式戦で通用するだけの手厚い指し回しと、絶対に間違えない終盤力が必要になる。
  • A級大学(全国大会出場校)のレギュラー:R2300〜2500
    県代表クラスの実力。アマチュア五段〜六段。定跡に明るく、大崩れしない安定感が求められる。ここでは「ただ強い」だけでは足りない。「チームのために負けない将棋」が指せることが重要視される。
  • 中堅大学(地区大会上位)のレギュラー:R1900〜2200
    道場の席主や、街の将棋教室の先生レベル。アマチュア四段前後。ここが最も層が厚く、個性的な将棋を指すプレイヤーが多い。得意戦法を一つ極めていれば、格上を食うことも可能だ。

もしあなたが、「自分はそこそこ強いから大学でも通用するだろう」と思っているなら、その自信は脆くも崩れ去るかもしれない。

大学将棋のレギュラーたちは、自分の棋譜を指導対局・棋譜添削サービスなどで客観的に分析し、弱点を徹底的に潰してきている。

才能だけで戦えるほど、この世界は甘くない。

高校将棋との違い

「高校までは強かったのに、大学に入って勝てなくなった」という声は後を絶たない。

高校将棋と大学将棋の間には、深くて暗いクレバス(裂け目)が存在する。

それは単なる棋力の差ではなく、「将棋というゲームの質」の変化だ。

主な違いを表にまとめて比較してみよう。

比較項目高校将棋大学将棋
持ち時間短い(10分〜20分切れ負けが多い)長い(持ち時間30分〜60分+秒読み)
勝負の質瞬発力、ハメ手、勢いが重要大局観、構想力、正確な読みが重要
研究量部活の時間内がメイン無限(深夜までの研究、AI解析が前提)
交流学校単位、健全な部活動大学間の交流戦、合宿、酒を交わした深い議論
プレイヤー層未経験者も多い元奨励会員や「将棋の虫」が急増

最大の壁は「持ち時間」だ。

高校将棋のような短時間の切れ負けルールでは、勢いやちょっとした奇襲で勝つことができる。

しかし、大学将棋の王座戦などの主要大会では、じっくりと考える時間が与えられる。こうなると、誤魔化しが効かない。

「地力」の差が残酷なまでに盤上に現れるのだ。

また、大学将棋には「大人の社交」という側面も加わる。

対局後の感想戦は深夜まで及び、時には酒を酌み交わしながら将棋論を戦わせる。

この濃密なコミュニケーションが、技術だけでなく、人間的な厚みをも育んでいく。

対局会場では、選手たちが扇子をパチリと鳴らす音が響く。

その音は、高校時代よりも重く、そして鋭い。

私の愛用している扇子
私の愛用している扇子

筆者の見解・考察:数字の彼方にある「深み」

ここまで、レーティングや段位といった客観的な指標を用いて大学将棋のレベルを解説してきた。

しかし、筆者が現場で肌で感じ、心底震わされた「レベルの高さ」の正体は、数字の羅列の中にはない。

大学将棋の真のレベルとは、「挫折を乗り越えた者たちが奏でる、再生の交響曲(シンフォニー)」にあると私は考察している。

「元・天才」たちのセカンドキャリア

大学将棋界の上位層を占める「元奨励会員」たち。

彼らはかつて、神童と呼ばれ、天才と崇められ、それでもなおプロという狭き門を通過できなかった者たちだ。

彼らの心には、間違いなく深い傷跡がある。

夢破れた痛み、自分への失望、将棋への愛憎。

しかし、大学将棋というフィールドは、その傷跡を勲章へと変える錬金術のような場所だ。

彼らが大学の団体戦で見せる将棋は、奨励会時代の「生活がかかった悲壮な将棋」とは一味違う。

仲間を背負い、純粋に勝利を渇望するその指し手には、憑き物が落ちたような透明感と、修羅場をくぐり抜けた者だけが持つ凄みが同居している。

この「精神的な深み」こそが、アマチュア強豪と一線を画す決定的な要因ではないだろうか。

単に「将棋が強い」だけではない。

「人生を将棋に狂わされ、それでも将棋を愛してしまった」という業(ごう)の深さ。

それが盤上に現れたとき、観る者の心臓を鷲掴みにするドラマが生まれる。

これは将棋を題材にした小説や映画でも描ききれない、生々しいリアリティだ。

将棋プロ年齢制限はなぜ?26歳の壁の真実…夢破れた天才たちのその後

「個」の限界を超える「和」の魔法

もう一つの考察点は、「団体戦というフォーマットが個人の限界レベルを引き上げている」という事実だ。

将棋は本来、孤独なゲームだ。

盤の前に座れば、誰も助けてはくれない。

しかし、大学将棋の団体戦では、不思議な現象が起こる。

隣で戦う仲間の優勢が伝播し、本来の実力以上の手が指せることがあるのだ。

逆に、チームの危機を救うために、火事場の馬鹿力のような読みが炸裂することもある。

これを「流れ」や「勢い」という言葉で片付けるのは簡単だが、私はこれを「集合知によるレベルの底上げ」だと捉えている。

日々の研究会で互いの思考を共有し、言語化し合うことで、チーム全体の「将棋脳」が同期(シンクロ)していく。

一人では到達できない高みへ、チームという翼を使って飛翔する。

その結果、プロ公式戦ですら見られないような、感情と論理が激しくぶつかり合う名局が誕生するのだ。

結論:大学将棋は「最強のアマチュアリズム」である

大学将棋のレベルが高いかどうかと問われれば、間違いなく「異常に高い」と答える。

だが、その高さはプロ棋士のそれとはベクトルが異なる。

プロが「正解を追求する求道者」だとするならば、大学将棋の彼らは「瞬間を燃焼させる表現者」だ。

限られた学生生活という時間の中で、仲間と共に、刹那の輝きを放つために魂を削る。

もしあなたが、「自分にはレベルが高すぎる」と尻込みしているなら、それは非常にもったいない。

そのレベルの高さに触れること自体が、あなたの将棋観、ひいては人生観に強烈な刺激を与えるからだ。

観るだけでもいい。応援するだけでもいい。

しかし、もし叶うなら、その熱狂の輪の中に飛び込んでみてほしい。

そこには、大人の理屈では説明できない、純粋で、残酷で、とてつもなく美しい世界が広がっている。

よくある質問Q&A

大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

ここでは、大学将棋の世界へ飛び込もうとする者、あるいは関心を持つ者が抱きがちな疑問に答えていこう。

Q1. 初心者ですが、大学の将棋部に入れますか?

A. 多くの大学で大歓迎されるが、覚悟は必要だ。

ほとんどの大学将棋部は、来るものを拒まない。

初心者には先輩が手厚く指導してくれるだろう。

しかし、レギュラー陣のレベルは遥か彼方にある。

彼らの対局を見て「自分とは違う世界だ」と絶望するのではなく、「いつかあそこに行きたい」と憧れを抱けるかどうかが継続の鍵だ。

まずは入門用の棋書を一冊読み込むところから始めよう。

私の愛読している定跡書と詰将棋本
私の愛読している定跡書と詰将棋本

Q2. 勉強やバイトと両立できますか?

A. 可能だが、強豪校のレギュラーを目指すなら「将棋が生活」になる。

エンジョイ勢であれば、週に数回の活動で十分に楽しめる。

しかし、A級リーグで戦うような選手たちは、講義の合間や移動中も頭の中で詰将棋を解いている。

彼らにとって将棋は趣味ではなく、呼吸と同じだ。

Kindleで定跡書を読み漁るのも日常茶飯事である。

私の愛用しているKindle Paperwhite
私の愛用しているKindle Paperwhite

Q3. 道具は何を揃えればいいですか?

私の愛用している盤駒
私の愛用している盤駒

A. 最悪、手ぶらでもいい。

部室に行けば盤駒や定跡書はある。

しかし、モチベーションを高めるために、自分専用の駒袋や扇子を持つことをおすすめする。

将棋会館で購入した「新手一生」扇子
将棋会館で購入した「新手一生」扇子

形から入ることは、意外と馬鹿にできない。

自分の道具に愛着を持つことは、将棋への愛着に直結するからだ。

Q4. 独学で強くなれますか?

実際に棋神解析を使っている様子
感想戦をしましょう。将棋ウォーズの棋神解析が手軽で便利です。

A. 限界がある。良質なインプットが必要だ。

現代はAIがあるとはいえ、やはり「強い人の考え方」に触れることが最短ルートだ。

囲碁将棋チャンネルなどの専門番組でプロの解説を聞いたり、Kindle Unlimitedで大量の戦術書を読み比べたりすることで、独学では気づけない「視点」を得ることができる。

Q5. 奨励会出身者はどれくらいいますか?

A. 強豪校には必ず複数名いると思っていい。

彼らは「元・プロの卵」だ。

大学将棋界において、彼らは特別なオーラを放っている。

しかし、純粋なアマチュア叩き上げの学生が、努力の末に元奨励会員を破る「ジャイアントキリング」も大学将棋の醍醐味の一つだ。

まとめ:大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

大学将棋のレベルと深淵。盤上の静寂を切り裂く蒼き修羅の熱情

大学将棋。

そこは、青春のすべてを81マスの盤上に捧げた者たちが集う、美しくも過酷な修羅の国だ。

レベルの高さは、数字や言葉では語り尽くせない。

アマチュアトップクラスの技術、プロ顔負けの研究量、そしてチームの誇りを背負った精神力。

これらが渾然一体となって、盤上のドラマを生み出している。

しかし、恐れることはない。その門戸は誰にでも開かれている。

初心者であれ、元奨励会員であれ、盤の前に座ればただの「対局者」だ。

駒台に置かれた持ち駒が、あなたの采配を待っている。

もしあなたが、この熱狂の渦に飛び込みたいと願うなら、今すぐ行動を起こすべきだ。

大学将棋部のドアをノックするのもいい。

あるいは、ネット将棋で腕を磨き始めるのもいい。

重要なのは、その一歩を踏み出すことだ。

さあ、次はあなたの番だ。

盤上で、あなただけの物語を紡いでみようではないか。